学生
対人援助職ってしんどそうだけど実際のところどうなの?
ぽまこ
しんどいけどその分やりがいもあるよ!詳しく説明していくね。
対人援助職とは
「対人援助職」って、改めて説明するとなんだろうと思って辞書を引いてみましたが、辞書に載ってないんですね。
「対人援助職とは」とネット検索してみても定義はあまり出ませんが、対人援助職という言葉自体は頻繁に出てきますし、論文でも使われています。
対人援助職とは、一般的に医師や教師、作業療法士など、その名のとおり人を援助するお仕事のことをいいます。
どのお仕事でも、最終目標は間接的にでも人のために働くことになりますが、対人援助職の場合は直接的に人のために働くお仕事です。
対人援助職のメリット
他者から求められる仕事
対人援助職に就いていると、「〇〇さんが担当で良かった」、「〇〇さんのおかげでここまでこれた」と言われることがあります。
何に対して幸せと感じるかは人それぞれだと思いますが、他者に求められることを幸せとする人はおられると思います。
それが仕事上のことであっても、他者から求められることには変わりありません。
自分が他の人の役に立っていることをダイレクトに感じることができるのは、この仕事のいいところです。
自分にしかできない仕事
「精神科で働いています」というと、複数の人から「あなたしかできない仕事に就けて良かったね。代わりが効く仕事じゃないものね」というようなことを言われます。
では、代わりがきかない仕事とはどんなものでしょうか。
どんな仕事においても、もし自分がいなくなると、多少なりとも周囲の人は困るでしょう。
しかし、代わりに誰かが入り、少し時間が経つとたいていのどんな仕事でも回ってしまいます。
逆に回らないと仕事がストップするということです。
代わりがいるということは、仕事上いいことだと分かっていても、「自分じゃなくてもできるよね」と考えると虚しくなるものです。
対人援助職もしかりです。
〇〇さんだから病気が治るということもあるでしょうが、〇〇さんの技術があるから病気が治る、とも言い換えられます。
もし〇〇さんと同じ技術を持った人がいるなら、それは代わりがいることと同義ですよね。
どの仕事でも、結局のところほとんど代わりはいます。
それはそうでしょう、世の中何億人もいるのに、代わりが効かない仕事を探す方が難しいです。
なので私は、対人援助職も「代わりが効かない仕事」とは考えていません。
しかし対人援助職は、「自分にしかできない仕事」ではあると思います。
たとえば精神科で働く作業療法士だと、自分自身を治療の道具として扱い、自分の考えも治療に生かすことができます。
自分の振る舞いが患者様に影響を与えます。
「自分」というものを売り物として扱う以上、それは「自分にしかできない仕事」なのだと思います。
自分にしかできない仕事をしている、と感じることは自己効力感が高まるきっかけにもなるでしょう。
ただ、「自分にしかできない仕事」をすることがいいことか悪いことか、それはその場に応じて変化します。
対人援助職の一番の良さは感謝されること
私が思う一番の対人援助職の良さは、直接ことばで「ありがとう」と感謝される機会が多いことだと思います。
対「物」の仕事だと人から感謝されることはもちろんありますが、なかなか機会は少ないですよね。
対人援助職だと、人に直接アプローチするので、必然的に感謝される回数が増えます。
たとえば業務中、何かを渡しただけ、何か教えてあげただけで「ありがとう」と言われます。
その一回はあいさつ程度に思えても、それが積み重なり回数が増えることで、自分の中で重みが増します。
対人援助職のデメリット
自分の努力と結果は比例しない
人相手の仕事なので、自分がどれだけ努力したり、強い想いを持って関わっていたとしても、必ず努力が実を結ぶわけではありません。
また、相手の成長が、自分が頑張って関わったからなのか、相手自身の力だけで良くなったのかが実感として分かりにくいところがあります。
バーンアウトに陥る可能性がある
「困っている人を助けてあげたい」、「なんとかしてあげたい」と思う人ほどこの傾向に陥ります。燃え尽き症候群とも言われます。
バーンアウトを提唱したのはフロイデンバーガーで、以下の3つの症状からバーンアウトを定義しました。
以下、久保真人氏の論文を参照・参考してご紹介します。
詳細は論文をご覧ください。
①情緒的消耗感
情緒的消耗感は「仕事を通じて、情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態」 と定義されています。
情緒的消耗感はバーンアウトの主な症状とされています。
情緒的資源が枯渇してしまった状態を指します。
② 脱人格化
脱人格化とは 「クライエントに対する無情で、非人間的な対応」と定義されています。
具体的にはクライエントが理解できないような難解な専門用語を振りかざしたり、クライエントに症状名やステレオタイプ的な特徴など没個性的なラベルをつけ、個人名で呼ばなくなるなどの行動です。
先ほど出てきた、「情緒的消耗」を節約するための行動です。
③個人的達成感の低下
情緒的消耗感や脱人格化が起こると、サービスの質の低下につながります。
それまで高いレベルで仕事にあたってきただけに、サービスの質の低下が自他ともにはっきりとわかり、それが個人的達成感の低下につながります。
以上のような3つの症状が表れます。
ただ、これだけ聞くと怖くなってしまうかもしれませんが、思いやりのある人が必ずバーンアウトに陥るかと言われるとそうではありません。
「自分自身と職務上の役割とをはっきり分ける」 など対処法はありますし、経験を重ねることによってストレスに対する対処法も増えてきます。
詳しくは久保真人氏の論文をご覧ください。
(参考・引用:バーンアウト (燃え尽き症候群)ヒューマンサービス職のストレス
久保 真人)
俗にいう「仕事に没頭して嫌なことを忘れる」ができない
よくドラマなどで、失恋したとした時に「失恋の痛みを忘れるために、がむしゃらに仕事に取り組む」という場面があったりしませんか?
事務仕事や、ものを作る仕事など、あまり人相手でない場合有効だと思います。
仕事に打ち込むというのは作業への依存であったり没入ですが、これが対人援助職だとなかなかできません。
プロなんだから気持ちを切り替えて!と言われてしまうかもしれませんが、私には難しく感じているところです…。
最初、私はオンとオフをしっかり分けようと努力していましたが、それは私には難しいという結論に達しました。
なので心がけていることは、オンとオフのレベルを同じにするということです。
プライベートでは楽しいことがたくさんあるので、テンションが上がることが多いのですが、テンションが上がりすぎるのを意識的に抑えています。
意識するだけでかなり変わりますし、感情の起伏が穏やかになるので自分自身疲れなくなりました。
個人の深いところまで話を掘らないといけないことがよくある
あなたは普段、人とどんなことを話しますか?友人だったら深い話をすることもあるかもしれませんが、横に座っている普通の同僚とかなら、程度の差こそあれ、あまり深すぎる話はしませんよね?
でも精神科で働くとたとえば「どうして違法薬物に手を出したのか」、「親が仕事をしろと言ってきて参っている」、「万引きしたときどういう気持ちだったのか」、「夜にとても悲しい気持ちになって過量服薬してしまったが、今後どうしたらいいか」などといった家族でも相談しにくいことを私たちに話してこられます。
毎回毎回、深い話題かと言われるとそうではありませんが、そういう話題になることはたくさんあります。
それがときにしんどく感じることがあります。
自分の担当の患者さんが亡くなってしまう
これは対人援助職というよりも、精神科特有の話かもしれませんが、患者さんが自死で亡くなることがあります。
実際私も担当させていただいた方が亡くなることはありましたし、担当以外の方も関わりは結構あるので、人数とすると結構おられます。
また、自傷されることももちろんあります。
昨日会った方が急に亡くなると、やはり辛いものがあります。これが精神科で働いていて一番辛いことです。
【まとめ】対人援助職のメリットとデメリット
以上いろいろとお伝えしてきましたが、一番のやりがいは?と聞かれると、患者さんが仕事をしたり、学校に行けるようになったり、作業所で過ごせるようになったり、安定して社会で生活ができるようになったときが、一番やりがいを感じます。
患者さん自身の力によって社会復帰できるのですが、それに少しでも力になれたと感じるとき、やりがいを感じます。
対人援助職のいいところを改めてまとめてみますと、
①他者から求められる
②自分にしかできない仕事である
③感謝される機会が多い
対人援助職のデメリットは
自分の努力と結果は比例しない
バーンアウトに陥る可能性がある
俗にいう「仕事に没頭して嫌なことを忘れる」ができない
個人の深いところまで話を掘らないといけないことがよくある
自分の担当の患者さんが亡くなってしまう
今回、対人援助職というよりも、精神科の作業療法士として働くことのメリットとデメリットも多く書いてしまいましたが、参考になれば幸いです。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。